2008年10月26日日曜日

第一回上海大会グローバル都市競争の時代 感想

上海の上海環球金融中心(森ビル)で開催された第一回上海大会グローバル都市競争の時代~経済成長と環境の調和を目指して~を視聴してきた。事前申し込みの際、申込みの期限を過ぎてしまっていて視聴できないはずだったが、参加している友人から「午前の時点で席に余裕があるから午後から今来れば入れるよ!」とありがたい連絡をもらえ、午後から視聴できることになった。これだけ「超」が着くほどの有名な講師の方々が上海で話すセミナーは上海では滅多に無いので期待を胸に今年ついに竣工した浦東の森ビルへ向かった。テーマはサブプライムに端を発する世界金融不安の中、これから日本と中国はどういう方向で進んでいくべきか。ということが中心だった。

中でもおもしろかったのは最後に設けられたパネルディスカッションだった。
以下、備忘録として書いておく。
※( )に人物名を入れているのはその方がそのまま話した内容ではなく、その方から自分なりに学んだことを書いているので、詳しい議事録などはNHKインターナショナルや日経新聞社などが出すであろう議事録を参照されたい。


テーマ :「国際金融都市の条件」パネリスト :森 稔氏(森ビル 代表取締役社長)
宮内 義彦氏(オリックス 会長・グループ CEO)
斉藤 惇氏(東京証券取引所グループ 代表執行役社長)
胡 汝銀氏(上海証券取引所研究中心 主任)
モデレーター :竹中 平蔵氏(日本経済研究センター 特別顧問慶應義塾大学 教授・グローバルセキュリティ研究所 所長)


≪サブプライムの発端≫
■ウォール街発の透明度が分からない(ウォール街の金融業社の人ですら分かりにくい)金融フォームや金融業社が利益を上げたいというインセンティブで信用力の無い人に押し付け社会に過度に創造された「富」がサブプライム問題を引き起こしウォール街のイメージが壊れていった。(斉藤氏、胡氏)

≪これまでのアメリカ中心の経済システムが壊れつつある≫
■アメリカが金融の中心のためアメリカ企業の高収益性が保て→それによりアメリカ市民の購買力が高まり→海外からの輸入が増える→日本や中国など海外の外貨準備高が増え→またそのお金がアメリカに流れるというお金の流れだったが、それが崩れアジアを始め全世界にその影響を及ぼしている。崩れた金融システムは再び元には戻らないだろうから新しいシステムを作りなおさないといけない。(宮内氏)
■金融と実体経済は例えば鉄鋼業界、携帯業界、食品業界と業界ごとにルールがあるが、金融とはあらゆるものに張り付いているものでさらにグローバルに広がっているもの。そのため世界共通の管理体制を引かなければならない。しかし現実問題各国の当局の動き「私の国は他の国と違うんだ」と言い合い国境の壁がある。(宮内氏)

≪アメリカではない金融都市の待望が望まれる。日本や中国が世界の金融の中心になれないか?≫
■ウォール街のように金融技術を高めるのでなく実態経済の実力を高める金融システムが望まれる。(宮内氏)
■自分の国だけ儲かればよいという時代ではなくグローバルに考えていかなければいけない。(斉藤氏)
■日本と中国の外貨準備高は合計で3兆円~4兆円近くあるがほとんどがドルで貯金されたもの。日本や中国独自の金融市場を発達させて、アジアの通過を世界に使わせるべきではないか?莫大な金融市場を持つ日本や外貨準備高の高い中国、また石油産油国などお金の蓄積ある国(マザーマーケット)が引っ張っていく今こそチャンスであり、責任を背負う時ではないか?(宮内氏)
■上海には30年住んでいるが、アメリカンスクール、イギリススクール、日本人学校など教育機関は充実している。空気や安全はまだ問題はあるが数年もすれば解決するだろう。グローバル企業の人が上海に赴任すると15%給料を上乗せされるので待遇面もいい。中国人は昔から、日本や韓国と違い、外国人を受け入れてきた。実際その証拠にオリンピックを成功させている。上海人の若者は英語しゃべれる人が多い。(胡氏)
■上海にするか?東京にするか?というゼロサムな議論ではなく、WINWINゲームを考えるポジティブサムな議論が必要ではないか?上海、香港、東京などなどアジアの金融機関の長所を生かし、24時間体制で対応できる新しい証券取引所を作ってもいいのではないか。(馬氏)

≪日本は世界金融の中心になれるか?≫
■資本主義である以上、自分の国を金融センターにしたい都市が無いはずがない。日本はこれまで円が安くならないと不況になる(円高不況)言われていたが、日本には強い産業があるので円はもっと強くできるはず。円が強くなるから日本の景気が良くなるという流れにしなければならない。国際金融センターになるには成田空港が都心から遠いなど問題はあるが、一つ一つ解決していけば日本はきっと大丈夫だ。(斉藤氏)
■金融センターになりたいと言うには、相当な覚悟がいる。政治、中央銀行が揃っていないと危ないのではないか。あのアメリカやロンドンですらこのような事態を引き起こしたことは肝に銘じるべき。(宮内氏)
■世界金融センターはアメリカ、ロンドンが数百年に渡って務めてきたが、背景には様々な「自由」があった。日本も「自由」な国にチェンジするべきだし今こそ挑戦する時だ。そうしなければ現在のままの(アメリカ依存型の)ビジネスはこの先持たないのではないか。日本を世界の金融センターにする。という夢と覚悟が必要だ。また、日本はそれだけの責任を負うべき国なのではないか。「自由」を創るために例えば東京だけを特区にするとか方法を考える。(斉藤氏)

≪金融都市はいかにして作るか≫
■金融とは人材獲得競争とも言える。そのため金融TOPの人が求めているものに応えられる住みやすいと思える国を作れるかが重要。それは仕事に限らず、娯楽、健康、教育と多岐に渡って考えなければならない。上海は海外の人からどのように見られているかまだ分からないが、東京は行きたくない国と一部では見られていることは事実。都市がヒートアイランド現象を起こしてしまっている。(森)

≪今後について≫
■観光と言えば富士山を見るとか温泉につかると言った自然を思い浮かべるかもしれないが、外国人が日本に旅行する時、東京にまず行くように実際は都市観光こそ観光だと思う。都市である東京も上海も観光客の受け入れが足りない。大きな文化産業なので伸ばしていきたい。あ、あと上海万博跡地とかを有効に活用させていただきたい笑(森氏)
■今回のアメリカの金融危機と同じ過ちを繰り返さないためにも、中国、日本はローカルな金融市場の発展が重要。アジアにおいて極めて重要なポイントである。(馬氏)
■日本の東京、大阪、京都などの都市は数百年の歴史の中で、権利意識は強いが、対立しないように発展してきた分厚い都市になっているので外国人は住みやすいのではないかと思うので排他的な、輸出立国円安OKという日本はやめるべきで、日本人はこれまでの蓄積をどんどん使うべき。円高が良いと言える経済を作るべき。そうしなければ次の世代の未来が無い。(宮内氏)
■日本と中国の歴史は遣唐使の時代にさかのぼる。今の日本の奈良を見れば長安を思わせる。戦争という歴史はあるが、長い目で全体の流れを見れば二国の関係は良いものと言えるのではないか。日中関係は相互補完関係になり、例えば日本の建設の細やかさとか中国にどんどん入れてほしい。(胡氏)
■現在実際にパンダーという商品名で東京と上海で具体的なビジネスを始めていることを知っていただきたい。1500兆円もあると言われている日本のお金で中国の新興市場に投資していきたい。東京の金融市場は英語を使わないことが一つの問題であるが、これからロンドンとともに英語を使った取引所を作るので英語の壁は取り払われていく。(斉藤氏)

≪竹中氏総括≫
■20年前バブルの時代、東京が金融中心になるべきではと思っていた。その際、金融都市とは何だろうと考えたが、以下三つが該当した。①場所貸し的な使いかっての良い国(ロンドンがそれで、香港、シンガポール、ドバイ、アイスランドなどが続いた)②国内に強い金融機関を持っている(ドイツのフランクフルト)③①、②を両方持ち合わせている。しかし、今ではこういった色分けは意味が無くなっている。今までの金融機関の在り方自体が問われてきている。日本や上海には新しいあり方を示す責任とチャンスが課されている。
■アジアはこれまで雁行型経済(日本の後を韓国、中国、ベトナムが追いかける)だったが、これは崩れ、カエル飛び型経済(ITでは韓国が、英語教育では中国がリードしている)に変化している。形は変わっているが、いずれにしても、国や個人の交流は大切。特に知的な交流はとても重要なのでこれからもこのような機会は設けていきたい。(竹中氏)


自分として特に印象に残った感想は以下
■日本と上海はこれからアメリカやロンドンに頼らず自分たちで金融システムを作っていく必要がある。
■携帯事業とか鉄鋼事業とかの実体経済は各事業ごとでそれぞれの規制が作れ、比較的管理しやすいが、金融はどの事業にもくっついていおり世界に広がっているため影響力が大きい。
■森ビルとしては14年かけて浦東に上海環球金融中心を作ったが、実際上海が思った以上に金融都市にまだなっていないため少し焦っている。
■日本は世界を代表する金融センターになるべく、国をあげて努力していかなければならない。そのために、外国人が住みたくなるような国作りが大切。金融センターになりたいというのは中国も同じように思っているので、そこで中国⇔日本と張り合ってしまわず、アジアのリーダーとしてWINWINの道をさぐるべきでは?

正直なところ金融の世界はまだまだ理解しきれていないので、議論についていくことでやっとだったがこれだけ国際金融のことを一日で学べたことは大変価値があった。また参加者にはもれなく、日経新聞出版社の『ビジネスプロフェッショナルの仕事力』が無料配布され帰り道で読んだが、今後世界はどうなっていくのか、何が起こるか仮説を立てながらビジネスを行っていくことが重要であることが中心に述べられており、こちらも勉強になる一冊だった。

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